謎解きレポート
(2004/12/29記)
(2006/10/15更新)

(目次)このページ内でジャンプします。

1 はじめに
2 調査結果
2−1 位置情報(経緯度)の分類
2−2 緯度6秒と経度8秒の謎
2−3 セクター測量
2−4 方位角の設定値(想定)
2−5 測量結果と設定値との比較
2−6 今後の課題


1 はじめに

(2004/12/29)

 J-PHONEの位置情報は、基地局によっては最大3個の経緯度(北緯・東経)を受信できることが知られています。
 ここでは、その3個の経緯度がどのような法則に従って設定されているのか、つまり3個型における経緯度パターンについて、おもに青森県における実例をもとにして調査したので、その結果をレポートします。

 調査の一部は、群馬県の廃人さんにご協力いただきながら行いました。
 (廃人さん、どうもありがとうございました)


2 調査結果


2−1 位置情報(経緯度)の分類

(2004/12/29)
(2005/07/19更新)

 青森県における位置情報の数と基地局の数は、別記1[基地局数と位置情報数(青森県)]のとおりです。
 そのうち、経緯度が3個あるもの(3個型)と経緯度が2個あるもの(2個型)については、別記2[経緯度パターン表記方法]により分類し集計しています(別記3[位置情報分類表(青森県)])。

 別記3の経緯度を、3個型の場合は3つのユニット(58局×3個=174個)に分解し、2個型(13局×1個=13個)と併せて分類集計しました(表1)。
 経緯度パターンには、[5-2]と[5+2]など左右対称なものが見られます。こうした左右対象のユニットは、同類とみなして一括しました。
 たとえば、[5-2]と[5+2]の数は、両方とも表1中、緯度の秒差が[5]で経度の秒差が[±2]の区点に算入しています。

 表1 位置情報ユニット集計表(2005/07/19現在)

経度の秒差
±0±1±2±3±4±5±6±7±8




0
-
0
2
2
6
9
0
8
2
29
1
0
0
9
0
0
0
0
0
0
9
2
0
3
1
1
3
2
22
0
0
32
3
0
0
0
13
31
0
1
0
0
45
4
8
0
0
0
0
1
0
0
0
9
5
6
0
31
14
1
1
0
0
0
53
6
9
0
1
1
0
0
0
0
0
11
23
3
44
31
41
13
23
8
2
188

 表1から、ユニットは、さほど多くの種類は出現せず、その分布には偏りが認められます。

 ここでは、次の2点に着目します。
  1. 緯度の最大秒差は6秒であること。
  2. 経度の最大秒差は8秒であること。

2−2 緯度6秒と経度8秒の謎

(2004/12/29)

 緯度の[1秒の長さ]は、地球上のどこでも同じです。
 経度の[1秒の長さ]は、赤道では緯度の[1秒の長さ]と同じですが、緯度が高くなるにしたがって短くなり、東京都心では緯度の[1秒の長さ]の81%の長さになります(表2)。
 (地球が完全球形でないことにより生じる微差は、ここでは無視しています)

 表2 都心における経緯度の[1秒の長さ]とその比

緯度の[1秒の長さ]
(A)
経度の[1秒の長さ]
(B)

(B/A)
31m
25m
81%

 都心における経緯度の[1秒の長さ]をもとにして位置情報(経緯度)の最大秒差の長さを求めたところ、緯度の長さと緯度の長さはほぼ近い値(186m≒200m)になりました(表3)。

 表3 都心における位置情報(経緯度)の最大秒差の長さ

緯度経度
1秒の長さ
(A)
31m
25m
位置情報の最大秒差
(B)
6
8
位置情報の最大秒差の長さ
(A×B)
186m
200m
 以上から、次のとおり推定しました。
  1. 位置情報(経緯度)の最大秒差が緯度と経度で異なる理由は、経緯度の長さを考慮しているためである。
  2. この場合、位置情報(経緯度)の謎を解明するためには、経緯度に補正を加えておく必要がある([3/4補正]。たとえば、[経度×3/4(6/8)]や[緯度×4、経度×3]など)。

2−3 セクター測量

(2004/12/29)
(2005/08/21更新)

 セクターの方向(方位角)の測量は当初、地形の関係上セクターの方向の偏りが想定される青森県南津軽郡大鰐町大字大鰐において試行しました。
 その後独自に、一定の条件下における簡易な[セクター測量方法](別記4)を開発し、青森県内のセクター測量を実施しています。
 そして2004年12月、群馬県において廃人さんのご協力の下、貴重な事例となるセクター測量を実施できる幸運に恵まれました。

 これらの測量結果は、別記5[三角形の外接円の中心と重心に関する計算式]を用いて位置情報(経緯度)から求めた方位角(設定値)とともに、位置情報・推定発信元一覧&セクター測量結果表にまとめています。


2−4 方位角の設定値(想定)

(2004/12/29)
(2005/09/03更新)

 位置情報(経緯度)から導かれる方位角(設定値)としては、次の4種を想定しています。

設定値(1) 経緯度で形成される三角形の外接円の中心から頂点へ向かう方位角
設定値(2) (1)に3/4補正を加えて得られる方位角(別記7[位置情報セクター図(青森県)]参照)
設定値(3) 経緯度で形成される三角形の重心から頂点へ向かう方位角
設定値(4) (3)に3/4補正を加えて得られる方位角

 これら4種の設定値について考察します。

 考察(1) [3/4補正]
 ・2−2の推定から、方位角の設定値としては、3/4補正を加えたもの((2)、(4))が有力。

 考察(2) [重心からの方位角((3)、(4))における問題点]
 ・180°以内に3セクターがおさまる場合(たとえば、青森県南津軽郡大鰐町大字大鰐)、3セクターの方位角すべてを表すことは不可能。

 以上から、「設定値としては(2)を採用すべき」と考えます。
 ちなみに、設定値(2)の場合は、東西南北(0°、90°、180°、270°)だけで構成される単純明快な方位角が出現しますが(位置情報・推定発信元一覧&セクター測量結果表の「セクター測量結果」中、番号が青字のもの)、他の設定値ではこうした単純明快な方位角は出現しません(「青森県三戸郡名川町大字森越」は、三角形を形成しない(直線になる)ので、ここでは除外して考察)。


2−5 測量結果と設定値との比較

(2004/12/29)
(2006/10/15更新)

 測量結果と設定値(1)〜(4)を比較すると、一部に100°を超えるなどの[著しい差]が認められます。
 (位置情報・推定発信元一覧&セクター測量結果表中、番号が朱書きのもの

 原因としては、次の事項が想定されます。

想定原因(1) 測量誤差のため。
想定原因(2) 位置情報の経緯度に一部誤りがあるため。
想定原因(3) 補完局の設置等に伴いセクターの方向が変更されても位置情報の経緯度は変更されないため。

 これら想定される原因について考察します。

想定原因(1) 当方の簡易測量は、当初は±20°以上も測量誤差が生じたことがあったので、補正や再測量を行っているところです。
 現在、測量精度は、当初よりも少し向上しましたが、まだ十分ではありません。
 しかし、ここでの[著しい差]は、そのレベルをはるかに超える大きさです。
 したがって、当方の測量誤差は、[著しい差]の主たる原因ではないと判断します。
想定原因(2) 憶測の域を出ません。
想定原因(3) 憶測の域を出ません。

 [著しい差]を示す事例を除いた場合は、測量結果は設定値(1)〜(4)に比較的近い数値を示しますが、ばらつきもかなり見られます。
 まだ測量結果が数少ないこともあって、測量結果が設定値(1)〜(4)のどれと近いのかなどを判断するまでには至りません。

 2006/10/14、屋上の局で測量困難なものを除きひととおり測量を完了しました(表4)。

 表4 測量状況

局数
3セクター局の数
58
うち、測量した局の数
53
うち、設定値と著しい差が認められない局の数
39

 設定値と著しい差が認められない局の数(39局)は測量した局の数(53局)の74%にすぎませんから、ここから統計処理を行って有意の結論に到達することはあまり期待できません。

 設定値と著しい差が認められない局について設定値と測量値の差を求めたところ、いずれの設定値とも同程度の結果となりました(表5)。

 表5 設定値と測量値の差

設定値(1)設定値(2)設定値(3)設定値(4)
測量値との差(平均)
14.8
15.2
14.0
14.5

2−6 今後の課題

(2004/12/29)
(2005/08/06更新)

 (1) 測量の継続
  ・ 測量事例の積み重ね
  ・ 測量精度の向上

 (2) 測量技術の拡充
  ・ リングがない場合の測量技術の開発
  ・ 筒が傾いている場合の測量技術の開発


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